早朝の奇跡

 レン………、  エレン!……
 
 どこからか声が聞こえる。
 決して真似はできない、深く強く、聞き覚えのある声。
 不機嫌そうに私の名前を連呼するのは、睡眠している私を目覚めさせようとしているのか。
 そうであるなら、負けるわけにはいかない。
 だって…、こんなに布団は温かくて、気持ちがいいんだもん……

 
 「こらお前っ!いい加減に起きろーー!!」
 「きゃあ!!!!」
 男は長い髪をなびかせながらエレンの掛布団と毛布を引っ剥がし、ついに空中へ投げた。
 ――――ハリードだ。
 もちろんそのアイテムはエレンの体温を維持していたため、それを失えばたちまちエレンにすさまじい冷気が襲いかかる。
 「なにするのよぉ!!」
 「起きろっつってんだ!」
 エレンは迷惑そうに起きあがり、枕元にある小さな時計を手に取る。時計とハリードの顔を交互に見比べた後、ひどく呆れた顔で大げさにため息をついてみせた。
 「見なさいよ、まだ5時じゃない!出発は7時でしょ?ハリード、あんたいい年して時計も読めないのねー。ホラ、さっさと布団返して!」
 「違うんだ!とにかくバルコニーに出ろ!」
 
 「え、ちょ、ちょっと、なんなのよ一体ーっ……。
 
 さっきまでは怒っていたはずのハリードに、今度は得意そうな表情で無理やり引っ張られ、なにがなんだか解らない。エレンは宿の寝室を出ると、ぱたぱたと足音を鳴らしながら階段を上がっていった。二階の渡り廊下の端にたどり着くと、そこにはほのかに錆びの匂いがするバルコニーがある。ハリードはそこで立ち止まった。
 少し遅れてエレンも追いついた。

 すると一度足を止め、目を丸くした。


 「雪……、降ってるね。キレイ………。」
 「だろ?」
 辺りには細やかな粉雪がちらついている。積もるほどの量ではないが、それが朝の日差しにきらきらと見え隠れし、エレンの起きたばかりの神経を魅了させた。
 「あ……!!私、ちょっと呼んでくる!」
 「あ?おい……。」
 エレンはもと来た道を慌てて駆ける。

      ぱたぱたぱた……… 

 ハリードはこの景色をエレンと2人きりで観ていたいと密かに望んでいた。しかし寝室の方から聞こえるエレンのはしゃぎ声を確かめ、すぐにあきらめて、自分もベランダから姿を消すことにした。
 「……やれやれ。」

 そう呟き、まだ結っていない黒髪に両手を突っ込んだ。

 ―――あいつにだけは、かなわないな。
 青年の寝ぼけた顔を想像すると、自然と笑みが浮かんだ。  


  エレンは勢いよく寝室のドアを開ける。
 「ユリアーン!!起きてーー!早くしないと終わっちゃう!!」  


[ No,120 緋凪えお様 ]

-コメント-
図々しいことに、2作目も送ってしまいます。これも中3の頃のですネ〜(汗)
余談ですが私の推測だと、
ユリアンはエレンが大好き。
エレンはユリアンが少し好き。
モニカはユリアンが狂うほど大好き。
ハリードはエレンが大好き。
だからモニカとハリードは協力して二人を突き放そうとしているわけなんです!!!!!
ゲーム中でも、ユリアンが自分がPガードに誘われた理由をミカエルに聞くと
「ハリードとモニカの意見だ」って言うし!
(あまり知られてないけど、案外ハリエレって公式カップルなのかな?)
すこし懐かしいラブコメみたいなこんな感じが、わたくし緋凪えおのロマサガ3ワールドです。

ご意見お待ちしております*