“マスカレイド誕生秘話”

カレルは“魔王”の異名を取る程の術士だったのだが、

後世には殆ど知られていないものの自らの魔力を込めた、

いわゆるマジックアイテムの製作者としての顔もある。

これはその1つ、

後にロアーヌ侯妃に代々受け継がれて行く事になる

“マスカレイド”にまつわるエピソード。


ヒルダ「ねえヴァッサール、バンガードを使ってフォルネウスの討伐にはいつ行くの?
ヴァッサール「明日の試運転が成功したらすぐかな。
   だらだらやってられないもの、
   とっとと行ってサクっと倒してとっとと帰って来る!
   ……ってトコかしら。
   ヒルダは参加しないの?
ヒルダ「私は伝説の雪の町を探しに行かなきゃならないから。
   あらゆる熱を退ける武具が眠っているって言うのなら、
   それでアウナスの力を無効化出来るかもしれないじゃない?
ヴァッサール「“あれば”の話だけどね。
   でも、それって“あの”フェルディナンドと一緒なんでしょ?
   大丈夫? 襲われたりしない?
ヒルダ「私、一応婚約者なんだけど……
ヴァッサール「そういう問題じゃないのよ。婚約してよーが結婚してよーが、
   強引に襲われそうになったら全力で抵抗するのが当然でしょ!
   だからあいつは“女は男に従って当然”なんて思い上がってるのよっ
   〜〜〜許せん!(怒りのニギリコブシ)
ヒルダ“(内心ため息)……また、ケンカして来たのね……
   「それよりヴァッサール、カレルも行くの?
ヴァッサール「行くわよ。試運転も、討伐にも
   何か用でもあるの?
ヒルダ「うん、何かいいモノないかなぁって。……!(閃き電球点灯)
   そうだ、ヴァサールからも頼んでもらえないかな?
   新しい武器が欲しいのよ。
ヴァッサール「いいけど、それならヒルダが1人で頼んだ方がよくない?
ヒルダ「ううん、ヴァッサールがいてくれる方がいいの。
   ね、いいでしょ?
ヴァッサール「しょうがないな〜。……別にいいけどさ
ヒルダ「じゃ、行きましょv

カレル「……新しい武器が欲しいのは構わないけどな(じと目)
ヴァッサール「何よ(睨み返し)
カレル「何でお前が一緒にいるんだよ
ヴァッサール「ヒルダの為に私からも頼むからに決まってるじゃない
カレル「……それがモノを頼む態度かよ
ヴァッサール「じゃあ下手に出たからって聞いてくれるの?
カレル「分かってんじゃないか。
   僕は作りたい時に作りたい物を作ってるんです。
   頼まれて作っても、ヘンな横槍ばかり入って楽しく無い
ヴァッサール「依頼主の注文通りに作るのが職人ってモンでしょ
カレル「そこがオカシイ。僕は職人じゃない。芸術品として作ってるんだ。
   そこに魔力が籠るのは僕が心血注いで作るからなだけなの。
ヴァッサール「でもバンガード用にイルカ像は作ってくれたじゃない
カレル「あと増幅器もな。
   でも間違えるなよ。あれはフォルネウスを倒す為に必要だって言うから、
   “仕方無く”作ってやったんだ。
ヴァッサール「そのワリには性能よさげだったんだけど
カレル「やっつけ仕事だからってこの僕が手を抜くワケが無いだろう
ヴァッサール「手抜きなんかされたらこっちが困るわよ。
   大体この状況で“芸術品”を作るだなんて、
   余裕カマしてんじゃないわよ
カレル「余裕無くして生きてなんかいられないね、僕は。
   特に心の余裕は重要だよ?
   それが無いとただただ追い詰められて、いずれは死んでしまうからね。
   人間って、結構そんなモンだよ
ヒルダ「そうよね、でも余裕があり過ぎても自分を見失って死んでしまうわよ?
   この間だって……
ヴァッサール「(話がズレて来た事に気付き)はいはい、ヒルダもカレルもその辺にして。
   それでどうなの? 作ってくれるの?
カレル「悪いけどその必要は無いね
ヴァッサール「何でよ!?
ヒルダ「やっぱり、ヴァッサールのじゃないとダメなの?
カレル「……はい?
ヴァッサール「ちょっとちょっと、何でそうなるのよ
ヒルダ「え、だってヴァッサールとカレルって見てると
   “ケンカする程仲がいい”ってカンジだから……
ヴァッサール「そんなワケないでしょ、私にとってコイツは実験材料なんだから
カレル「それはヒドイな。せめて研究仲間ぐらい……いや、
   とにかくそういう意味じゃ無いから、ヒルダ。
   ホラ(持っていた短剣をヒルダに投げ渡す)
ヒルダ「え? これ?
カレル「あげるよ。
   ちょっと作ってみたのはよかったんだけど、
   やっぱり僕は武器を使った戦いには向いてなくてね。
ヒルダ「でも、思ったより重いわね、コレ
カレル「本当は大剣なんだ。
   それを魔力でその大きさに変成したんだ。
ヴァッサール「(興味津々)なぁに、それじゃ魔力を注げば元の大きさに戻るって事?
カレル「甘いな。こんな事如きに僕が魔力を使うワケ無いだろ。
ヴァッサール「いちいちムカつく言い方する奴だわね、あんたってホンットに
カレル「褒め言葉としてとっておくよ、それ。
   元に戻すには鞘から抜いて柄を握ったまま
   “マスカレイド、ウェイクアップ!”
   って叫べばいいよ
ヴァッサール&ヒルダ「……叫ぶ?
カレル「そう。叫ぶの。
ヒルダ「……それはちょっと、恥ずかしいかも……
ヴァッサール「〜〜念の為に聞いておくけど、元に戻すにも何か叫ぶワケ?
カレル「良く分かったね。
   “グンナイ、マスカレイド”って叫べば戻るよ。
   簡単だろう? これなら知ってさえいれば誰にでも使えるしね
ヴァッサール「“起きろ”と“おやすみ”ね……(脱力)
ヒルダ「確かに、忘れそうには無いけれど……(困った様な笑い顔)
ヴァッサール「(顔を上げわずかに青筋立てつつ)……あんた、まさか、
   ワザとやってんじゃないでしょーねぇ?
カレル「(あさっての方向を眺め遣り)さぁ〜て、どうかなぁ〜
   あ、それからね、大剣の時だけ使える技もあるんだよ、それ。
   ムーランルージュって言ってね……
ヴァッサール「わざとらしく話を変えるな!……


……そうしてマスカレイドはヒルダの手に渡り、

4人目の魔貴族放逐の際にカレルが生死不明となった為、

そのままヒルダの所有物として

以後ロアーヌ侯妃の間に受け継がれる事となった。

まる。


[ No,199  Sword ]

-コメント-
comment by Sword
#またまたやってしまいました、
 今度はヴァッサールとヒルダ、カレルの3人によるマスカレイド誕生譚です。
 勿論ヴァッサールは聖王三傑の1人で
 ヒルダはやはり三傑の1人フェルディナンドの奥さんですが、
 カレルはウチとこオリジナルの聖王12将の1人です。
 前回に引き続き、3人共々詳しくは語りの方で
 “聖王と12将について”と言う題名で掲載されてるので、
 そちらをご参照下さいませ〜(やっぱり手抜き…)

#今回は最初っからギャグ狙いのネタでした。
 やはりネクラな話ばかり打ち込んでると、
 たまにはこういったおバカな話もやりたくなるのが人情と言うモノで。
 そんなワケでヒルダをちょっと天然さんにしてしまいました。
 カレルも言葉遣いが違うし……
 何はともあれ、笑うなり呆れるなりして頂ければこれ幸い。