ザ・ウェディング・フェイクショー!
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≪はじめに≫
この作品はED後の世界を舞台にした小説です。そのためいつもより、作者による独断と偏見、ネタバレ、オリジナル設定が多く書かれています。
そのようなものがお嫌いな方は、読まずにブラウザを閉じてください。
勢いだけで書いたので、誤字脱字、矛盾点があってもあしからず。
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聖王暦318年、春。神王の塔にて。
山のように詰まれた書類の真中で、一生懸命事務をこなしている少年がいた。
名は、あえて言うまい。それ以前に、本名で呼ばれること自体少ない。
彼は、周囲の者より『神王』と呼ばれていた。
「神王さま〜!お手紙ですよ、ロアーヌ王国からの。」
彼の従者で、最も頼りになる(そして最も早口な)アフマドが、手紙を持って部屋に入ってきた。
「有難う。」
少年は手紙を受け取ると、封を開け、丁寧にその内容を読んだ。
「何て書いてあります?」
「別に?」
そして、いじわるく微笑む。
「見世物小屋への、招待状さ。」
紋章入りの馬車に揺られながら、エレンは夫に言った。
「いつもは静かなのに、今日はお祭騒ぎね。まるでツヴァイクみたい。」
名君ミカエルの下、急成長しつつあるロアーヌの都は今、君主の慶事に喜び沸きかえっていた。
妹のモニカ姫が嫁いでから遅れること3年、ようやく結婚する気になったのか。
聞くところによると、恋愛結婚らしい。女に興味は無い、と公言して憚らないミカエルの心を射止めたのは、いったいどんな女性なのだろう。
市井の人々はそのたくましい想像力を働かせ、様々なことをささやきあった。
「きっと、美しくて聡明な方でいらっしゃるのよ。」
「いやいや、ビューネイみたいな毒婦さ。」
「先代のフランツ様は、こうなることを最初から知っていて彼女にマスカレイドを託したんだろう、いやそうに違いない。」
ささやきの一部が聞こえて、エレンは皆好き勝手言ってるわね、と言った。
隣に座っていたサラが、ふと思い出したかのように姉に尋ねた。
「ねぇお姉ちゃん、彼は来るかしら?」
「彼って?あんたの愛しのダーリンの?」
「ちっ、ちが…!た、確かにそれもあるんだけれどもっ。」
「分かってるわよ、アイツのことでしょ?来るわよ、たぶんきっと絶対に。」
その言葉に、事情を知るエレンの夫も頷いた。
と、そのとき、馬車が停まった。会場の聖フェルディナンド教会に、着いたのである。
「お似合いですわ、カタリナ様!純白のドレスに、ばらの花束がよく映えて!本当にお美しい………!!ばあやは…、ばあやはこの日が来ることをどんなにお待ちしていたことかあああぁああぁ〜!!!!」
最後のほうは、ほとんど絶叫だった。
カタリナの膝の上で感涙に泣き崩れ、今までの苦労や喜びを語りだす。
「ありがとう、ばあや。」
ばあやの白い頭をなでながら、しかしカタリナの心は落ち着かなかった。
(この日が来ることを、ばあや以上に強く望んでいたはずなのに。)
マリッジ・ブルーなどというものではない。
まるで暗い森で一人ぼっちになったような、激しい孤独感に襲われていた。
(どうして?)
愚問だった。
分かっているのに。初めて出会った時から、彼のことを、ずっと…。
扉を叩く音が、その続きを遮った。
「カタリナ様、お時間です。」
侍女の口調が、ミカエルの求婚と同じくらい事務的に聞こえた。
ロアーヌ王の結婚式には、宣伝の一種も兼ねているのだろう、世界の名だたる王侯貴族が招かれていた。
右を見れば、ツヴァイク公爵、ポドールイ伯爵レオニード、ユーステルム卿ウォード。
左を見れば、経済王トーマス・ベント、その又従兄でメッサーナ共和国大統領のハンス・ベント、都市同盟の若き盟主フルブライト23世。
二人を結びつける大役は、ランス教皇、つまり聖王家当主が執り行う。
これだけのビッグゲスト、警備も当然厳重である。
やがて、厳かな聖歌が響き渡り、新郎新婦が入場した。
だれかそのとき、カタリナの表情をしかと見た者はいたのだろうか?
青ざめうつむいた表情を乙女の恥じらいだと、賓客たちは思い込んでいる。ブーケが両腕を縛る鎖、ドレスが鉛で出来た鎧のようにして歩いているのを、彼女の気の置けない仲間以外は誰一人とて気がつかなかった。
教皇が聖書の一部を読みあげるのを、カタリナは呪詛のように聞いていた。
そして、束縛の呪文が完成する。
「では誓いの口付けを。」
重いパイプオルガンの音。
ゆっくりと近づいてくる、ミカエルの顔。
(ハリード……!!)
カタリナは目をつぶり、固く拳を握り締める。
そのときだった。
「おい貴様、何も…ぎゃあ!?」
「曲者だ、であえ、であえ―――っ!!」
「ぐぎゃあ!!」
「何ごとだ!?」
ミカエルが近衛兵の一人に叫んだ。
「はっ!侵入者のようで…!」
「おのれユリアン!いったい何をしている!?」
会場がどよめくなか、重い扉が開かれた。
真っ赤な絨毯の引かれたバージンロードを、黒い風が吹き抜ける。
オールバックの黒い髪、褐色のたくましい四肢。
「ハリード!!」
カタリナの瞳から、大粒の涙があふれる。
「カタリナ、行こう。」
ハリードが、偽りの花嫁に手を差し伸べる。
だが、
「許さんぞカタリナ!」
カタリナの腕を折れるのではないかと思うほど、強く握り締める。
「行くな、カタリナ!これは命令だ!」
「ミカエル様…!」
カタリナを引き寄せて唇を奪おうとする…
どかっ!ばきっ!ごんっ!
痛々しい効果音とともに、ミカエルは意に則さない方向へと倒れる。
その後ろには、聖書(厚さ1500ページ、オリハルコーンの縁取りつき)を持ったランス教皇が。
「いいんですか?」
「大丈夫。真実の愛のためならば、多少のことは聖王様とて見逃してくれるでしょう♪」
歌うように言って、胸で十字を切る。
(だからって何も3発殴らなくても。)
カタリナはそうツッコミたかったが、彼女にそんな暇はない。
邪魔なブーケを天井に放ち、左手でドレスの裾を、右手でハリードの手を掴む。
ブーケは、ミューズのもとに舞い降りた。
だが二人はそれを確認することなく、走り出す。
「待て、貴様ら!」
「生きて出られると思うなー!」
「ミカエル様のカタキィ!!(注:死んでません」
「アクセルスナイパー!」
「んぎゃあっ!?」
真横からどつかれ、近衛兵は思いっきりぶっ飛んだ。
どピンクに染めた髪をはためかせ、隠し持っていた小剣で兵士たちの行く手を阻む。
「ヒトの恋路を邪魔する奴は、象に蹴られてアビスに落ちろ――っ!!」
「こりゃこりゃタチアナ…」
年老いた父親は、慌てて娘を止めようとするが、それは無意味なことだった。
残り三人の子供たちも、参戦してしまったからである。
それらの様子を見ながら、エレンはお腹を軽くさすって言った。
「ウーン、残念残念。あたしも暴れたいけど、宝物がお腹ン中にいるんだよね〜。」
とはいえ、足を組みどっかりと長椅子に座っているところを見るととても妊婦とは思えないのだが…。
追いかける近衛兵の一人を、足で引っ掛けるところなど、特に。
「バイバイ、ハリード。男の子だったら、あんたの名前だけは付けないわ。」
走り行く二人を見送りながら、エレンは柔らかく微笑んだ。
「あらまあ、すごい結婚式だこと。」
詩人がいたら、きっと喜ぶぜ。あいつ、こういうの大好きだからな。
廊下で会ったユリアンが、そう笑った。
ハリードが最初この道を通ったとき、ロアーヌ近衛兵の隊長として邪魔をしたらしく、怪我をしていた。辺りには、完全に伸びきった衛兵たちが数十名。ユリアンだけが、壁に寄りかかりわき腹を抑えている。唇からも、一筋の血が流れていた。
「お幸せに!」
すれ違いざまに、手を重ねあう。パアン、と乾いた音が廊下に響いた。
「この先、ラストボスがいますんでご注意を!」
人生の師匠に向かい助言すると、ユリアンはそのまま気絶した。
ラストボス、と言われても、ハリードとカタリナには最初ピンと来なかった。
だが、彼を見た瞬間、二人はユリアンの指摘が正しかったことを確認する。
「お久しぶりですね、ハリードさん。…いえ、父様。」
「お前…。」
2年ぶりに会う息子は、最後に出会った時よりもはるかに背が伸びていた。母親の面影を強く残した顔立ちも、徐々に青年のものになり始めている。
ハリードは一瞬、親としての喜びにふけったが、すぐにそれを打ち消した。
「邪魔するつもりか。」
「いいえ。」
少年は、左右に首をふるう。ゆっくりとハリードに歩み寄り、抱きしめる。
そして、震える声で呟いた。
「母様のこと、愛していました?」
「……ああ。」
「僕のことも?」
言って、少年は父親をきつく抱きしめた。
「ああ。」
返すように、ハリードも息子を片手できつく抱きしめる。
カタリナが息を飲み二人を見守る中、少年はハリードにしか聞こえないよう小さな声で言った。
「ロアーヌから北へ少し行ったところに、小さな丘があります。そこに駿馬と、カタリナさんの着がえを用意させました。アフマドも一緒ですから、すぐに分かるでしょう。」
少年はハリードを解放すると、
「もう、二度とお会いすることはありませんね。さあ、行ってください!」
少年が「さようなら!」とつけ加えるより先に、二人は駆け出していた。
鬱蒼とした教会の扉の向こうには、抜けるような青空が待っている。
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≪設定≫
カップリングは、何故かハリード×カタリナになってしまいました。私、ハリード×ファティーマ派なのに。「見世物小屋への招待状さ」と皮肉ったセリフと、父親にさよならする少年を書きたくて書いたら、こうなっちゃいました(^^;)
それ以外のカップリングは皆様の想像にお任せします。サラの「愛しのダーリン」、エレンの「夫」、モニカの結婚相手、全て皆様の想像力に(サラの「愛しのダーリン」だけは少年に……ダメ?)
少年に関しては、オリジナル設定としてハリードとファティーマの息子ということになっています。さらにED後、記憶を取り戻したということになっており、現在は神王としてナジュ砂漠でなれない政務に励んでいます(神王になった経緯は、またいつか)
そして特に目立ちませんでしたが、オリキャラのアフマド。マシンガントーカーのため、倒置法だらけのおしゃべりをしてしまうという悪い癖が彼にはあります。一応、リブロフでハリードに姫のことを教えたあの青年で、少年が「アフマドも一緒ですから、すぐに分かるでしょう」と言ったのも、このためだったりします。
最後に、ここまで読んでくださった皆様、有難うございます。
≪おまけ(後日談)≫
アフマド(以下、アフ)「……神王さま。会場で一体何があったんですか?」
少年「別に?何も。強いて言えば父と子の感動の再会と涙の別れかな〜…。」
アフ「ウソおっしゃらないでください!
あの後、ハリード様たちが来ましたけど、神王さまのおっしゃったとおり。
アバラ骨6本折ってましたよ、ハリード様!
確か傷薬も用意しておけ、ともおっしゃってましたけど…まさか…。」
少年「ふふふ、やだなぁアフマド。僕がそんなことするはずないじゃない☆」
(チッ、背骨折るつもりで抱きしめたのに!)
アフ「うわ、怪しいです!その笑顔、メチャメチャ!」
少年「ア・フ・マ・ド?あんまりシツコイと、アビスの風を吹かせるよ!」
アフ「ひ、ひえ〜!!す、すみませんでした!!」
[ No,190 ラシュクータ様
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-コメント-
送った後、いつも後悔するんですが、恥かしい〜!!!
それと題名、良いの思いつかないんで適当につけちゃいました…(^^;
車も小説も初心者マークですが、これからもなま温かい目(!?)で見守っていてください。
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