頭髪、緑に萌えて
それは一つのターニングポイント。男は家で一番大きな鏡の前に立つと大きく息を吸い込んだ。その目には強い意志の炎が揺らいでいる。

「俺は変わるんだ・・・。誰もが注目する・・」

その手には銀色に光る鋏が握られていた・・・。



「ほー・・てぇい!」

ロアーヌ郊外のシノンの森には今日も開拓民の威勢のいい声が響く。同時にズズズ・・という木が倒れる音。その中心に一人の少女がいた。長い髪を結んで後ろに流しただけのポニーテールと言う簡単なヘアースタイルからこの少女がファッションにこだわらない性格であることがうかがえる。だがその自然ないでたちの中にも健康的な美しさがありありと表れている。

「ふー・・やっぱり一撃・・とはいかないわねえ。」

倒れた木の前に腕組した姿勢で少女がつぶやく。木の切断面は3つほど傷が段になっていた。少し離れて木を倒す少年が呟く。

「それが出来たらもう人間ではないかもしれないな・・。」

バラバラの薪に変わった木片を荒縄で縛りつつアフロヘアの少女も頷く。

それにしても・・

「ねえ、トム。あいつは?」

ポニーの少女が思い出したように少年に尋ねる。

「あいつ?ああ、ユリアンか。そうだな、いつも遅刻するとはいえこの時間にはいつも君の側にいるからな。気になるのか?」

意地悪く少年が微笑む。

「ジョーダン。ただ薪を運ぶのはつまらないからあいつにやってもらおうと思ってただけよ。あたしは木を切ることに集中したいの。」

手をひらひらさせて軽くいなす少女に少年は苦笑する。

「やれやれ、とんだ女王様だな。エレンは」

アフロヘアの少女も肩を揺らして笑う。

「ほんとお姉ちゃんって人使いあらーい。」

「なーによ。あたしの後をついてくるんだったらそれぐらい当然。」

「はは!エレン相手じゃユリアンの奴も形無しだな!」

「誰が相手でもそうだと思うよ!」

「相手次第だってば!」

三人が腕を止め談笑していると遠くで彼らを呼ぶ声がする。まだ声変わりしていない可愛らしい少年の声だ。

「エレン!トムにサラも、こんなところにいたのか、探しちゃったよ!」



少年を視界に捉え瞬間三人の時が止まった。

少年の頭が不自然になくなっている。禿げているにしては頭が妙に短い。

少年が走り寄る。三人はそれで段々とその正体が見えてきた。

髪の毛が背景の森に溶け込んでいたのだ。緑 緑 緑!

「な・ん・だ、その頭はー!!!」

三人の爆笑が森を包んだ。

「え・・?格好・・いく・・ない?」

唖然とする少年をよそに、その爆笑の合唱は日が暮れるまで続いた。

それ以降、少年ユリアンのいじられキャラのイメージは変わることがなかったと言う・・・。


[ No,60  ナカタ様 ]

-コメント-
今回はユリアン=髪染めてるのスタンスで小説をかいてみました。
小林さんの絵で私は判断するので、解釈のしようがないくらい緑なユリアンのかみは人為的なものだろうと思って。
同じ色の人もいませんしね。
(カタリナさんはミューズと同系色)